ビジネスモデル
しまむらグループの強みは、高感度・高品質・低価格を兼ね備えた「商品力」と、高い利益を生み出す「販売力」です。
そして、この強みは、基礎と基盤となる「人材育成」「ローコストオペレーション」「独自の仕組み」に支えられています。
人材育成
しまむらグループは、企業の発展には社員一人ひとりの成長が不可欠であると考えています。社員の成長には、現場経験やOJTを通じた知識や技能の習得に加え、Off-JTにより、当社の社員として必要な基礎知識や考え方、倫理観を学び、人材育成の土台を築くことが重要です。当社は人材育成によって、社員一人ひとりの仕事を通じた自己実現をサポートしています。
- M社員制度
- しまむらグループの従業員の8割以上がM社員(パート社員)です。M社員制度は、店舗で働くパート社員のために作られた制度です。これは、能力があるもののフルタイムで働きにくい主婦層を想定し、高い処遇と家庭生活を両立できる時間シフト制を取り入れた当社独自の制度です。高い能力のM社員と、マニュアルに基づいた店舗運営により、店長1名とM社員6~10名程度という少人数での店舗運営を実現しています。
- 店長昇進制度
- しまむらグループでは、M社員の中から有能な人材を店長として登用しており、現在の店長の約7割がこの制度から誕生しています。店長昇進後はその上位職に当たるブロックマネージャーや他の職種にも挑戦でき、社員本人の働きやすさと成長を両立した制度です。店長昇進の目標を持つことで、仕事へのモチベーションが上がり、社員一人ひとりの能力向上だけでなく会社の成長にも繋がっています。
- また、店長を目指す社員への支援体制も整えています。一例として、店長昇進への不安を解消するために、ロールモデルとなる社員の経験談を共有する説明会や、店長候補者を育成するための教育カリキュラムを用意しています。さらに、店長を目指す意欲を引き出すため、ポスターや社内報を使い、キャリアアップの啓蒙活動を行っています。
- 適性に応じた職場配置
- しまむらグループでは積極的な大卒採用を継続的に行い、管理職への登用を行っています。R社員(正社員)の人事は、入社10年以下は仕事のポストを短期間で変えるジョブローテーションを基本とし、その後は適性のある部署に5年以上所属し、スペシャリストを養成します。ジョブローテーションにより、様々な部署で広い視野と知識・業務スキルを身につけ、常にチャレンジ精神を持ち続ける有能な人材へ成長することが出来ます。
- 公平な人事評価
- 全社員が会社の方針を理解し、直属上司の指示・命令のもとで最高の成果を得るために、そして全社員が能力を充分に発揮するために、公平な人事考課制度を定めています。また社員には、常に広い視野に立って新しいあるべき流通業の姿を求め、自己育成することによって質の高い業務を遂行し、良い業績と社業拡大によって社会的役割を果たすことを期待しており、その結果として賃金を公平に支払うための給与規程を定めています。
- 教育システム
- 社員一人ひとりの自発的な成長を促すため、担当部署の教育部が中心となって独自の教育体系を組み立てています。特に、R社員(正社員)においては、管理者としての知識を身に付け、意識と意欲を醸成するため、入社時から2年間、店舗での実務教育(OJT)と、知識・理論を体系的に学ぶ階層別教育(Off-JT)を実施し、主体性をもって行動できる有能な人材の早期育成を図っています。また入社時だけでなく、階層別・部署別の教育や自己啓発支援など、社員が長期にわたって成長を続けられるよう様々な教育制度を整えています。
新入社員教育(正社員) / | 新入社員教育(パート・アルバイト) | |
階層別教育 / | 部署別教育 / | 女性社員キャリア研修 |
通信教育 / | 資格取得支援制度 / | アメリカセミナー |
ローコスト
オペレーション
小売業にとって、チェーンストアを高いレベルで効率的に運営するためには、「ローコストオペレーション」を業務の隅々にまで浸透させることが基本であると考えています。
私たちしまむらグループは、「4S」「自前主義」「マニュアル化」を徹底して追求してきたことで、コスト削減だけでなく、合理的な仕組みとしての「ローコストオペレーション」を実現しています。
- 4S
- チェーンストア経営の大原則に「標準化(Standardization)」「単純化(Simplification)」「専門化(Specialization)」の頭文字をとった3Sがあります。この3Sにより、多店舗運営が合理化され、「ローコストオペレーション」の実現に繋がります。
しまむらグループでは、3Sにさらに「仕組化(Systematization)」を加え、4Sとしています。仕組化とは、合理的な発想により組織を組み立てることを意味し、当社は、この4Sをもとに成長を続けてきています。 - 自前主義
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- ▼物流
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日本全国の店舗に商品を供給するチェーンストアにとって、物流システムの良し悪しは運営と業績に重大な影響を与えます。自社の配送をアウトソーシングする流通業が多い中、しまむらグループは6店舗の時代から物流システムの構築を始め、30店舗を超えて自社運営の物流センターを築き、以降、機械化・システム化・大型化を図り、常にユニークな仕組みを独自に考案しながら、店舗業務の合理化とサプライヤーの利便性向上を進めてきました。
- ▼システム
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チェーンストアの基幹を支える情報システムは、運営する店舗数によって全く異なります。しまむらグループは、早くからシステム運営を重視し、300店・500店・1,000店・2,000店と規模に応じたトータルシステムを作り上げてきました。
そのシステムは自社開発を基本とすることで、自分たちが必要とする最適なシステムを無駄なく開発でき、また、スピーディなシステム改善も可能となります。 - ▼店舗開発
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立地開発を不動産業者に任せる小売業が多い中、しまむらグループは、店舗の適正な立地・規模・条件の基準をマニュアルで規定し、商圏調査から地主・オーナーとの交渉、契約、そして許認可に至るまで自社の開発部員が直接行っています。極めて低い退店率がその優位性を示しており、安定成長の原動力となっています。
- ▼店舗建設・什器開発
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お客様がお買い物をしやすく、社員が働きやすい店舗と売場を実現するため、店舗建設や什器開発は自社の専門部署が行っています。店舗設計では、細部に至るまで徹底してこだわった自社の標準仕様を基準として、店舗建設部員が設計業者や建築業者への指示や現場検査を行っています。
また、陳列什器や備品の開発では、お客様の買いやすさと店舗業務の効率性を最大限に高めるため、店装部員がその設計から什器業者への指示、現物確認まで全て行っています。加えて、全店の売場レイアウトも店装部員がCAD(コンピュータによる設計ソフト)を使用して設計し、自社のノウハウを蓄積しています。
- ▼広告宣伝
- 従来、外部の撮影スタジオで行っていた、チラシ商品やオンラインストア用商品のささげ作業(商品の撮影・採寸・原稿作成)の内製化のため、本社内に商品撮影用のスタジオを設置しました。自社スタジオの活用により、広告宣伝業務の効率化とスピードアップを図っています。
- マニュアル
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しまむらグループはマニュアルを全ての業務の根幹と位置付けており、全ての部署でマニュアルを基本に業務を行うことで、標準化と合理性を追求しています。新入社員でも早いスピードで一定レベル以上の業務を遂行できるようにするため、最も優れたベテラン社員のやり方をマニュアルとして標準化しています。このマニュアルに基づく徹底した標準化と合理的な運営が「ローコストオペレーション」の基盤になっています。
マニュアルに欠かせない仕組みが「改善提案制度」です。業務の最適化を実現するには、常にマニュアルをブラッシュアップし続けることが非常に重要です。当社では、全社員から毎年1万件以上の「改善提案」が提出されます。それらをひとつひとつ検討・実験し、その結果を新しいマニュアルとして毎月更新し続けることで、業務は常に現状に合ったものに改善され、「ローコストオペレーション」が支えられています。
しまむら独自の仕組み
良品低価の"しまむら安心価格"でお客様に商品を提供するため、高効率なローコスト運営を徹底することがしまむらの経営の基本となっています。そのため、出店、仕入、物流、販売の全ての工程において、「ローコストオペレーション」を実現するための独自の仕組みを構築しています。
出店
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立地開発
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しまむら事業は、ドミナント出店(特定の地域での集中出店)戦略により、高密度の店舗展開を行ってきました。郊外のロードサイドへの出店は、15,000世帯程度の小商圏を前提に、高い占有率を確保することを基本としています。日本の平均的な1世帯当たりの衣料品購買額は、平均で年間約10万円ですので、15,000世帯の商圏での購買力は約15億円となります。その商圏購買力の20%を占める約3億円の売上が1店舗の基本です。このようなドミナント出店は、商品センターから店舗への配送効率の向上や、出店地域での認知度向上にも効果を発揮しています。また、しまむら以外の事業についても、それぞれ売上や客層に合わせた商圏エリアの基準を設定し、ドミナント出店を基本とした店舗開発を進めています。
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店舗建設
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全国各地においてドミナント出店を早いスピードでローコストに行うためには、店舗の標準化が不可欠です。しまむらグループでは、その標準化のために、建物や駐車場、広告塔や外構など、全ての建築物において、自社独自の建築標準仕様を設けており、その仕様に基づいた設計や施工が行われているか、建設部員が全ての工程をチェックしています。この標準化によって、当社、設計業者、建築会社の全てが同じ基準で建築を進めることができ、完成度の高い店舗を早いスピードで建築することが可能となっています。加えて、資材の標準化や自社の建築仕様の見直しによる建築コストの削減も常時進めています。
仕入
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商品調達
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しまむらグループは、サプライヤー(=メーカーや商社など)から商品を仕入れて販売する小売業です。アパレル業界にはSPA(製造小売)の企業もありますが、当社は仕入型を追求することで、販売に専念することができ、その販売技術を高めてきました。商品調達については、長期のお取引を基本として約600社のサプライヤーとの強固な連携を築きながら、それぞれのサプライヤーが持つ優れたデザインや商品企画、生産管理のノウハウを最大限に活用し、商品開発の技術を高めてきました。
商品の品揃えと販売計画は、バイヤー(商品部)が担当し、商品カテゴリー毎の販売計画に最適なアイテムをサプライヤーから仕入れています。商談は全て本社のバイヤーが一括で行う「セントラルバイイング」形式で行い、多店舗展開の「スケールメリット」を活かして大量発注することで、仕入れコストの削減を図り、リーズナブルな価格での販売を実現しています。サプライヤーは商品をしまむらの商品センターへ「一括納品」し、納品後、一度仕入れた商品は返品なしの「完全買取」とすることで、サプライヤー側のコストも軽減されており、サプライヤーと当社の双方にとって有益な取引環境を築いています。また、仕入全体の約1割は、専門部署である貿易部が海外の優良工場と直接貿易を行い、ローコストで商品調達することで、高品質なベーシックアイテムをリーズナブルな価格で販売しています。
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商品開発
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しまむらグループの商品構成は、多品種少量が基本で、豊富な商品の中から自分に似合うアイテムを探し出す「宝探し」のようなワクワクする楽しさが特長です。なかでも、自社開発ブランドのPB(Private Brand)や、サプライヤーとの共同開発ブランドのJB(Joint Development Brand)といった各種ブランドの商品開発に重点的に取り組んでいます。
しまむら事業のPB「CLOSSHI(クロッシー)」は、ベーシックゾーンを軸として、着心地や使い心地、素材や作りにこだわった商品を、幅広い世代のお客様に向けて、一定の品質と価格帯を維持しながら提供しています。
JBは、エレガンスやカジュアルといった「テイスト」と、ヤングやミセスといった「年代」を軸に、商品のポジショニングを明確化し、各領域に適したブランド作りを行っており、代表的なブランドには、しまむら事業の「HK WORKS LONDON(エイチケー ワークス ロンドン)」や、バースデイ事業の「futafuta(フタフタ)」などがあります。またJBは、売場でのトップス&ボトムスのトータル販売やWEB販促などでブランドの世界観を打出し、お客様のブランドの認知度向上を図っています。
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商品管理
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お客様に安心してお買い物できる商品をお届けするため、公的基準(JISなど)をもとに社内の品質基準を策定・運用し、サプライヤーに対しても取引開始時や基準改定時には、その基準を提示し周知徹底を図ることで、確実な品質・安全管理を実施しています。
「CLOSSHI(クロッシー)」を始めとする自社開発ブランドのPB商品は、公的検査機関による品質検査に加え、商品管理部員による品質検査を実施しています。また、PB生産工場の現場確認と改善指導は外部機関に委託せず、自らの目で行っています。事故(針や危険物の混入)防止対策や不良品に繋がる問題点の改善に努めるとともに、サステナビリティ課題への取り組みの一環として、生産に従事する労働者の安全や労働環境などもチェックし、問題点があれば改善指導を行っています。
物流
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自社運営の商品センター
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しまむらグループは、国内10ヶ所に自社運営の商品センターを展開し、北海道から沖縄に至るまで毎日商品配送を行っています。当社の物流の基本は「スピード」です。商品センターでは、大量の荷物を短時間で配送するために、省力化・高速処理への追求を継続しており、サプライヤーから納品される荷物を社員が手で取り扱うことなく、全て機械で仕分けから搬送まで高速で行っています。この独自の仕組みにより、最大規模の東松山商品センターでも社員4名、M社員約30名で運営されています。荷物1箱あたり、手紙1通程度の低コストで配送できているのも、機械化・自動化された高速の物流システムと自社運営によるものです。
また、2020年10月にオープンした直営オンラインストアは、東松山商品センターの敷地内に建設したEC専用の物流センターを使用しており、既存の店舗配送の物流網を利用することで物流コストを抑えるなど、当社独自の「ローコスト EC」として、その運営レベルの向上を図っています。
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自社共同配送
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共同配送とは、複数企業の荷物を集め、共同で配送を行う仕組みです。しまむらグループでは、国内10ヶ所に自社運営の商品センターを展開し、約600社あるサプライヤーからの納品を商品センターで受け付けています。サプライヤーにとっては、全国2,200店舗以上の各店舗ではなく商品センターへまとめて納品するため、物流コストが削減できます。
また、午前中にサプライヤーから納品された商品は、午後に商品センターで店舗毎に仕分けされた後、交通量が少ない夜間にかけて店舗へ配送することで、トラックの配送効率を高めています。そして、店舗ではその翌日の午前中に商品の検収作業を行い、その日のうちに売場への商品の店出しが可能となるなど、全ての工程における全体最適を考えた共同配送システムを構築しています。
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直接物流・モーダルシフト
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直接物流とは、従来、日本国内で行っていた商品の仕分けや値札付けなどの流通加工を、相対的にコストの安い海外で行い、海外で船積みされたコンテナをサプライヤーの日本国内の物流センターを通さず、直接、しまむら商品センターに納品することです。海外の生産工場から出荷された商品が直接、しまむら商品センターに納品されることにより、日本国内の流通経路で発生する細かな手間が省かれるため、物流コストの削減に繋がっています。
また、一部の商品センター間の輸送では、モーダルシフト(トラック輸送を環境負荷の小さい海運や鉄道へと転換すること)を採用し、物流効率を上げることで、CO2の削減を進めています。また、2022年1月に新設した東京デポでは、都内の一部店舗への輸送にEVトラックを利用することでCO2の削減へ取り組んでいます。
年度 2019 2020 2021 2022 2023 直流比率(%) 39.9 38.2 37.6 38.5 37.6 ※直流比率...直接物流の仕入原価÷全体の仕入原価
販売
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店舗運営
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店舗では、マニュアルに基づいて標準化が徹底されたオペレーションにより、店長1名とM社員6~10名程度という少人数での店舗運営を実現しています。マニュアルには、接客やレジ業務、商品陳列やディスプレイ、清掃の手順に至るまで店舗運営に必要な全ての作業が分かりやすく記載されています。店長は、売上予測や商品入荷量などにあわせてM社員が効率的に業務を遂行できるよう、日々の作業計画を作成して店舗を管理しています。
また全国の店舗はエリアごとにブロックとして編成され、約5~6店舗を1名のブロックマネージャーが管理します。ブロックマネージャーは自店の店長を兼任しながら、プレイングマネージャーとして、ブロック全体の売上向上と店長の指導にあたっています。マニュアルに基づく徹底した標準化とブロック運営により、店舗は効率的に運営され、高い生産性を上げています。 -
売場管理
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売場のレイアウト設計や陳列什器の開発は店装部が行い、商品が納品後の売場の陳列・演出管理は、コントローラー(商品部)が行うことで、全店舗の売場管理の標準化と単純化が進んでいます。加えて、売場の販促物を管理する販売企画部が、商品と売場、販促の展開スケジュールや売場設定を一元管理することで、売場全体の統一感をコントロールしています。また、個店別の売場管理は店長が行いますが、そのエリアのブロックマネージャーが毎週現場確認を行い、各店舗に応じた売場の修正を行うことで、全店舗の標準化の完成度を更に高めています。
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在庫管理
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全店舗の在庫管理は、コントローラー(商品部)が担当しています。SKU(Stock Keeping Unit、色・サイズ・デザインなどに細分化した在庫管理の最小単位)ごとに管理された商品データを使って、色別・サイズ別・デザイン別・地域別など様々な角度から商品動向を分析し、それぞれの商品について、売れていない店舗からより売れる店舗へ店間移動(=移送)を行います。また、当初計画と実際の販売動向から乖離した商品は、販売効率を上げるための適切な値下を行います。このように、コントローラーが一括して全店舗の在庫をコントロールすることで、低い値下率で最後の1枚まで売り切ることを可能にしています。
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EC事業(直営オンラインストア)
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2020年10月にしまむら事業で開始した直営オンラインストアは、東松山商品センターに併設して建設したEC専用の物流センターを使用し、既存の店舗配送の物流網を利用することで物流コストを抑えるなど、しまむらグループ独自の「ローコスト EC」として、その運営レベルの向上を図っています。当社のEC事業は、オンラインストア上の売上向上はもちろん、店舗とECの相互送客による既存店売上の向上も事業の目的としています。現在、オンラインストアでお買い物したお客様の多くが店舗受取りを選択しており、ECから店舗への送客に効果を発揮しています。
なお、2021年秋にはバースデイ事業、2022年春にはアベイル、シャンブル事業もオンラインストアを開設し、しまむらグループ全体でEC事業の規模拡大を図っています。